西大路校 永井副校長インタビュー①
どうして日本語教師になろうと思いましたか
私は大学を出て、長年日本の子供たちに英語の教師として英語を教えていました。
「日本語教師」という職業自体は、英語を教えている頃から知っていましたが、自分の中で「国語があまり得意じゃない」という意識もあり、「自分には無理だろう」と漠然と思っていました。
でも40歳になり、このまま歳を重ねていくのではなく、何か一つチャレンジできるものがないかと思い、思い切って日本語教師の世界に足を踏み入れました。ですから「海外に行きたい」とか「すぐに日本語教えたい」とかそういう感じではなくて、本当に「資格を取る」という感覚の方が最初は強かったです。
でも、資格を取ったら取ったで、やっぱり教えてみたくなりますよね?そこで、たまたま家の近くにあった京都民際日本語学校に「資格を取ったばかりなんですけど、もしよかったら声をかけてください。」という感じで、飛び込みで訪問してみたんです。たまたまその時欠員が出たという事で、お世話になることになって…(笑)。運も良かったと思います。それから本格的に日本語教師の道を歩き始めました。
実際日本後教師になってみて、どうでしたか?
やっぱり難しいなと思いましたね。母語話者じゃない人に日本語を伝える、教えるという事がこんなに難しいものだとは、やるまでは思ってもみなかったですね。
英語を教えられていた時と、やはり違いましたか?
直接法という観点で行くと、英語も同じように直接法で教えていたから、教え方のテクニックや教え方に関しては全然苦労はなかったです。でも、やればやるほど「日本語って難しいな」と感じました。
先生が日本語を教えるにあたって、これは外さないようにしているというか、
ここは大事なポイントだと思う所は?(学生に対して)
どの言語もそうだと思いますが、言語習得は数学のように公式があって、そこに数式を当てはめていけば答えが出るという単純なものではありません。実際にそれぞれの母語を使っている人たちの文化や生き方がわからないと、しっかりとは習得できないものだと思います。
学生が初級の段階では無理ですが、ある程度できるようになってきたら、日本人がどういう人間か、なぜこのような言い方をするのか、日本人だからこのような言い回しや表現を使う、といったような私たちの文化的背景や思考、生活スタイル等々から関連してくる部分は本当に大事な部分だと思います。押し付けにならないことを常に気を付けながら留学生たちには伝えたいとは常に思っていますね。
今と比べると昔の方が情報を手に入れるのは難しかったと思いますが、
その当時は日本語教育関連の情報はどうやって手に入れていましたか
先輩に聞いたり・・・といったところでしょうか。当時は今みたいにオープンな勉強会もあまりありませんでしたし。あっても各学校内や日振協(日本語教育振興協会)で何かやってたくらいですね。今はオンラインセミナーなんかも各地でやっていて、簡単にそこに参加できるようになっていますし、本当に便利になったな、と思いますね。
永井先生は養成講座において「人材育成」というタスクをこなされているわけですが、
「人材育成」という観点から見た、ここは気を付けているとか、ここは外せないといったポイントはあるんでしょうか?
この日本語教師養成講座には将来海外や国内で教えたいという方々が来られます。ただ中には資格だけでいい、教えること自体あまり得意でない、など教師としての心構えの強くない方もおられます。勿論それはそれで良いのですが、やはり、お金をもらって教える限りは、その人たち(日本語を学ぶ学生)が求めているものをきちんと提供してあげないといけない。どんなビジネスでもそうだと思いますが、お金の対価を返してあげないといけないと思います。「プロとしての意識」その辺りは言いますね。
養成講座を通じて立ち上げ時から現在まで、何か変化のようなものを感じることはありますでしょうか?
どうでしょう…(笑)。う~ん、あんまり思いつかないですけど…。あえて言うなら、今も昔も海外で働きたいという方はおられますが、昔に比べると、ガツガツしてる人が少なくなってきたかなぁ…と感じます。昔はお金なんかいらない、自分のやりたいことをやってみたい、第2の人生を歩んでみたい、という若い人たちやリタイアした人たちがたくさんいらっしゃった気がします。もちろん今もたくさんいらっしゃるでしょうけど、残念ながら昔ほどは会えていない気がしますね。時代の変化でしょうか。
西大路校副校長という立場から、あるいは現役の日本語教師という立場から、
今考えていること、今後やってみたいことはありますか?
やっぱり次の世代の育成かなと思います。次の世代へしっかりと橋渡しをしたいと思いますし、またそのサポートもしていきたいとも思っています。そして個人的には少し落ち着いて、いろんな国の日本語教育事情を見て回りたいですね。どういうスタンスやスタイルで教えているのか、一歩引いた形で見てみたいです。私は教えずに(笑)
あと、常に思っているのは、言語とはAさんの概念をBさんに伝えるための方法の手段の一つであって、Aさんが100%考えていること、伝えたい感情などがBさんに100%伝わることはまずありませんよね。それが100%できる方法は何かないかな?という事を考えています。
それは日本人同士でもそう。私も家族といても、なかなか100%伝わらないなと思う時が多々あります(笑)。その辺のちょっとした誤解がなくなれば、世界はもっと平和になるなといつも思います。
→②へ続く
2月16日
聞き手:京都民際日本語学校 住田伸夫